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第45話 木崎先生は、鍵を持っていただけだった

last update Tanggal publikasi: 2026-11-02 14:52:08

第45話 木崎先生は、鍵を持っていただけだった

 留守番電話を残した女性の名は、藤野恵子といった。

 七十六歳。

 二十七年前、清泉病院跡が民間団体の研修施設として使われていた時期に、約四か月だけ厨房の手伝いをしている。

 正式な職員ではない。近隣の弁当店で働いていたところ、知人から「山の研修所で食事を作る人手が足りない」と声をかけられ、週に三日か四日、昼食と夕食の準備をしていたという。

 面会場所は恵子の自宅ではなく、本人の希望で市内の公共施設にある小さな会議室になった。

「家じゃ話したくないんです」

 会って最初に、恵子はそう言った。

 白髪を短く切り、背筋は年齢のわりにしっかりしている。環たちが想像していたより元気そうだったが、清泉病院という名前を口にするときだけ、声が少し硬くなった。

「家族に知られたくない?」

 久世環が尋ねる。


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